千葉県浦安市で鍼灸院をしているTENGEN院長です。
5月26日(土)に、積聚会主催の講習会応用2コースの第2回目がありましたので、参加して来ました。
場所はお馴染み錦糸町にある積聚会事務局です。
今回の講義では、「精気」や「太極」の話になりました。
東洋医学は「気」の医学
東洋医学を一言で言うとこれに尽きると思います。
「えっ!東洋医学って陰陽・五行論じゃないの?」
と思われるかもしれませんが、そもそも陰陽とは「陰の気」・「陽の気」という名称になります。(五行ももちろん陰陽に属します。)
つまり気から何かが変化した時に気の現象を表現する言葉になります。
陰陽は気の状態を現します。
「気」というものが、色々変化した時に現れている現象を陰陽五行で表現している事になります。
東洋医学書の原典
東洋医学の最古の医学書と言えば、黄帝内経「素問」・「霊枢」になります。
一般的には東洋的な治療法は「素問」・「霊枢」から始まっています。
しかし、一つ注意しなければいけない事は、医学書というところです!
「何言ってんだよ!」
「東洋医学なんだから医学書が当たり前だろ!」
とおっしゃりたいのはごもっともですが、
医学書という事は、専門書になるわけです。
専門書という事は、基本的な事は解っていることが前提になってきます。
現代でも、何も知らない状態から解剖学や生理学、病理学などの専門書をいきなり読んでも、全然理解できないですよね?
黄帝内経が編纂されたのが前漢の時代(紀元前206年ー8年)と言われています。
この当時には、気の概念も陰陽も理解されている上で、書かかれているのではないでしょうか?
では、「気って何?」・「陰陽とは何か」が書かれている書物はないのか?となります。
これは、黄帝内経よりも古い「易」になります。
易の説明がなされている『易経』に書かれています。
易経は周時代(紀元前1100年ー紀元前770年)に書かれたものになります。
積聚会名誉会長の小林詔司先生は、東洋思想の原典である『易経』に着目し、それに基づいた理論性・技術を考えて積聚治療を作られたそうです。
精気為物
こちらは『易経』繋辞上伝第4章にある一遍です。
「精気物を為す(せいきものをなす)」と読みます。
精気は万物を生成するもとになるもの。万物の根源の気。と辞書に書かれています。
精気は物を作るという意味になります。
あらゆる物は全部精気から出来ていると理解します。
では、ここで言う「物」とは何でしょう?
「物」というのは人が認識しているものを言います。認識しているという事は、ほとんどの物は見えるということです。
見えるものは精気から出来ている。
言い方を変えると、
「見えない力から見えるものが出来ている。」
となります。
ここで言う「物」も時代によって限界が変わってきます。
易経が書かれた数千年前だと、見えるものの限界は蒸気や湯気だったり霞とかが限界だったのではないでしょうか?時代と共に認識できる(見える)範囲は変化していき、現代物理学では「物」の最小単位は素粒子になります。
素粒子は認識できる最小単位ですが、その素粒子も見えない力(精気)によって出来ていることになります。
ではこれを人に例えると・・・
生命は「見えない」
生命体は「見える」
見えない生命の力によって見える生命体が出来ている。
言い方と変えると、見える生命体は見えない生命の力によって存在している。となります。
あらゆる臓器を集めても見えない生命の力が無ければ生命体にはならないし、見えない生命の力が尽きれば、生命体は形を変えること(死を迎えること)になります。
「物は精気が具現化したもの」になります。
ただ人間は、見えるものでしか判断ができません。
なので見えるものの変化で見えないものの変化を読み取ることができます。
太 極
「易有太極」
こちらは、『易経』繋辞上伝第11章の一遍です。
「易に太極に有り」
易を調べてみると
上の図は、易の構成(変易)になります。
太極から陰陽に分かれ、またその陰陽から陰陽に分かれていきます。
ここで注目したいのは、太極が陽になっている事です。
見えるもの(認識できるもの)は陽、見えないものは陰になります。
太極は物事の始まりであり、変化する直前の事なので太極は絶対的な陽になります。
ではここで、先程の精気の話を見てみましょう。
太極は物事の初めの状態(認識可)、その太極を作るのは精気になります。
易の構成も認識できるところから始まっていますが、その物を存在させている力が根元的な陰(精気)なります。
これを人に例えると・・・
太極を生命体としたならば、生命(精気)の力によって生命体は存在できているとなります。
ただ、人の身体は同じ状態が続くわけではありません。
いつまでも同じ状態が続くという事は、人は年を取らない(死なない)事になってしまいます。
厳密には1分1秒と同じ状態ではないのです。
太極の状態から変化した状態が陰陽になって別れ、両儀・四象・八卦と枝分かれをしていきます。
陰 陽
「太極生両儀」
こちらは『易経』繋辞上伝第11章の一遍です。
両儀=陰陽
両儀とは陰陽の事です。
「太極、両儀を生ず」
太極から陰陽が生まれるのです。
この陰陽が皆さんがご存知の相対的な陰陽になります。
「絶対概念を基本的に否定し、この世の全てのものは相対的な存在であることを前提にしている。」
という定義があります。
なので陰陽は、陰だけ・陽だけで存在することはありえません!
- 上があるから下がある
- 内があるから外がある
- 右があるから左がある
- etc
陰陽とは、対立的であり、また統一的な関係。
対立は二者の間の相反する一面であり、統一は二者の間の制約しあいながら、同時にまた補完しあう関係。
そして、どこを基準にするかによって陰陽は変わってきます。
その基準になるのが太極です。
ではここで病を例にしてみましょう。
実 技
受講生同氏がペアになって、基本治療とカルテ記載を30分以内に終わらせ、吸角の練習になります。
今回は督脈上に吸角を10個やり、陰圧が強いか先生に引っ張ってもらいます。
まだまだ斑が多い!
練習あるのみです。
写真は自主練と治療を兼ねて、督脈上に吸角をしています。
ま と め
今回の講義は「精気」・「太極」・「陰陽」のお話でした。
東洋思想の根幹になる部分です。
積聚治療と他の治療法との最大の違いは、積聚治療は『黄帝内経』が起源ではなく、『易経』が起源であると小林詔司先生が仰っていました。
今回の内容は、講義+自分で調べて記事を書いてみました。
調べれば調べる程、この内容は奥が深いですね!
少しでも皆さんに内容が伝われば幸いです 🙂
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