千葉県浦安市で鍼灸院をしているTENGEN院長です。
12月9日(土)に母校である両国で卒業生セミナーがありましたので、行って来ました。
恒例のセミナー前の一品は、
やっぱり文殊のそば定食になりました。
両国には沢山食べ物屋があるのですが、月1のセミナーなのでどうしても足を運んでしまいます。
今年のセミナーも今回が最終回!
今回は治療の核となる「背部兪穴」の講義になりました。
背部兪穴治療の意義と区分
意義
背部兪穴の治療は、胸骨治療と共に精気の虚を補うための中心的な治療である。
背腰部位
1)横区分
背部には上部から、「金・火・木・土・水」の五行的要素を持つ兪穴が配当されている。
その境界は椎骨をもって表現する。
- 金領域:第1胸椎棘突起上
- 金領域と火領域の境界:第4胸椎棘突起上
- 火領域と木領域の境界:第7胸椎棘突起上
- 木領域と土領域の境界:第11胸椎棘突起上
- 土領域と水領域の境界:第2腰椎棘突起上
- 水領域の下限:第4・5腰椎棘突起間あるいはヤコビー線
2)縦区分
背部には、椎骨正中部の督脈とその外側に位置する脊際線および2本の足太陽膀胱経が走っている。
- 正中のもの:督脈
- 椎骨外側際のもの:脊際線
- 内側の足太陽膀胱経:膀胱経1行線
- 外側の足太陽膀胱経:膀胱経2行線
背部兪穴の治療方針
前回の講義にありました「腹診をして腹症を決定する」に従って背部兪穴の治療方針が決まります。
背部兪穴治療の最も基本になるパターンを第1方式といいます。
心虚証:木→火→金→水
脾虚証:火→土→水→木
腎虚証:金→水→火→土
肺虚証:土→金→木→火
肝虚証:水→木→土→金
この治療手順は難行69難の方式を使っています。
第1方式の序列をA→B→C→Dと表現するならば、現在、臨床上である程度意味があると考えらてれいる組み合わせは、次の4組になります。
第1方式:A→B→C→D
第2方式:C→D→A→B
第3方式:B→A→D→C
第4方式:D→C→B→A
治療方針の選択
治療方針は病症に応じて選択していきます。
(1)陰虚病症:第1方式
(2)陰実病症:第2方式
(3)陰実・陽実病症:第2、3、4方式
(4)陽実病症:第3、4方式
(5)陽虚病症:第4方式
病症と治療方式については下記の記事に詳しく書いています。
2行線の取穴
治療は、原則として2行線から始める。
各領域で使用するツボは1穴として、術者の触覚に委ねられる。
取穴のコツは、最も触れやすい肋骨角の内端を見つけることである。
但しこれは、火・木・土の領域のことであり、金の領域はもっとも力の無いところ、水領域は志室穴でよい。
これはかなり難しいことで、何度も先生に確認してもらい、先生と同じ触覚になるように修練するのが重要です。
2行線治療後
5穴目からは症状の重度に応じて他経に移る。
但し、使用するラインは2経までとする。
例
- 2行線→1行線:第1方式の場合など
- 2行線→脊際線:咳、骨粗鬆症など
- 2行線→督脈:熱症状など
治療手段の選択
陰虚病症:鍉鍼あるいは毫鍼で十分である。
陽虚病症:鍉鍼の使用あるいは知熱灸を考慮する。
陰実・陽実病症、および陽実病症で発熱のあるもの:督脈の点灸を考える。
陰虚病症以外では、慢性的なものに督脈の知熱灸を考える。
他行線も2行線と同じ治療方式に従う。
治療方法
背部の観察
皮膚温、湿り気、色艶、皮膚の状態、皮毛、痛み、痒み、凝り、くすぐったさ、脊柱の状態、筋の左右差、動作障害など。
背部指標の確認
項頚部:胸鎖乳突筋、項部、顎関節後面
肩・背上部:烏口突起、肩関節後面、肩甲骨、肩井穴、斜角筋
腰仙部:志室穴、臀部、仙腸関節・仙骨部、腸骨稜
下肢部:委中穴、委陽穴、足底、崑崙穴、太谿穴
全身:督脈、脊際
患側、健側の決定
(1)志室穴を最重要指標とし、左右志室穴の自覚痛、圧痛、硬結の順位で有無を確かめ、それらの強い方の背部を患側、反対側を健側とする。
例えば左志室穴の圧痛が右志室穴のそれより強ければ、左背部が患側となり右背部が治療対象部位になる。
あるいは右志室穴に硬結のみで左志室穴に何もなければ、右背部が患側、左背部が健側となり治療対象部位になる。
(2)志室穴に何の反応もなければ委陽穴や臀部、仙骨部の反応に従い、反応の弱い方を健側とする。腰仙部に何の反応もなければ、背上部をみる。
(3)指標の左右差がないもの、あるいは指標がまったくないもの、あるいは反応が同程度であって左右差がみられない場合
- 任意に治療側を選ぶ。
- 治療過程で、志室穴の反応がでるようになるなど指標が現れることがあれば、その場合は改めて患側を決め、その次のツボから健側を選ぶ。
背部の接触鍼
腹部接触鍼の所で書きましたが、接触鍼自体に身体の影響はでますので、背部の接触鍼の後、改めて指標を手際よく再確認することも必要になります。
接触鍼についての記事は
背部兪穴への治療
(1)膝部、腰部、肩関節・肩部、頚部の指標を十分意識し、10~30秒ごとに、指標の変化を触診して確認する。また、主訴の指標にも注意を向ける。
(2)第1穴目で一通り指標の確認を行い、指標の変化が止まったと感じられたとき、第2穴目に移る。同様に第3穴目、第4穴目を行う。
(3)治療中に指標の反応がかえって強くなることがあるが、それは気の動きの一過程であるから、その症状が治まるまで鍼を続ける。
(4)鍼の力が弱いか、あるいは精気の虚がことのほか強い場合、指標の変化は不十分である。
追記:坐位での治療
坐位での観察
これまで臥位であった患者をここで坐位にさせる。
患者が起き上がる動作に異常がないか、眩暈を起こすようなことはないか、などを観察する。
背中を術者の方に向けさせ、ベッドに腰掛けさせるか、正座の姿勢を取らせる。
次のような項目に注意して背部を観察する。
- 皮膚のゆるみ具合
- 頚部の安定性
- 左右の肩の下がり具合
- 身体の左右の偏り
- 背骨の屈曲の程度
さらに肩に触れ、左右のこりと圧痛を確認する。
肩部の治療
肩上部の異常に対して巨刺(左側に症状があれば右側を、右側に症状があれば左側を刺す)を応用する。
意識を反対側の緊張部位に置いたり、頭部から背骨を透して腰部や足の先まで何回も往復させたりして、患側の肩の緊張をゆるむのを待つ。
最後に、肩の湿り気を拭って治療を終える。
そのため、陽虚性とみる患者で上実性の強いものがある場合には、この過程は省略し臥位のままで治療を終える。
また妊婦には応用しない。
陽虚性の強いケースに肩の治療をすると気が下がり気分が悪くなる。たとえ肩凝りがあってもそれを十分に取り去ってはいけない。
症状に応じた慎重さが求められる。
積聚治療の治療手順
A 望診、聞診、問診
B 切診
- 脈拍数を計る
- 指標の確認(仰臥位)
- 腹部接触鍼
- 脈の確認(六部定位脈診)と調整
- 腹部の積の確認、腹症決定
- 指標の確認(伏臥位)
- 背部接触鍼
- 背部兪穴(2行線)+必要ならば補助治療
- 指標の確認(仰臥位)
- 脈と腹部の再確認+必要ならば補助治療
- 指標の確認(坐位)
- 肩部の治療+必要ならば補助治療
講義風景
今回の講義は特に背部の観察について重点的に行われました。
皮膚の状態、皮毛、皮膚の色艶、湿り気などを観察することで熱症状が強いのか・冷え症状が強いのかを判断する目安にもなります。そして、治療を重ねることで変化をしていけば、主訴があまり変化がなくても精気の虚が補われている指標になります。
先生曰く、
「良い治療家は、そういう細かい所に意識を配り、変化することによってその人の状態を把握しているものだよ!」
とおっしゃっていました。
実技風景
今回実技風景の写真を撮る事が出来ました。
実技の時は皆さん楽しそうですね!
毎回10名少々とそこまで大人数ではないセミナーですけど、質問や手技・指標の確認など、とっても聞きやすいのが魅力だと思います。
まとめ
今年は全6回と例年と比べると回数が少なかったのですが、基本的なところから臨床上で注意した方が良いちょっとしたアドバイスなど、今年も充実したセミナーになりました。
おまけ
今年も最後のセミナーという事で、セミナー後に親睦会を開催しました。
また来年もセミナーよろしくお願いします!
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