千葉県浦安市で鍼灸院をしているTENGEN院長です。
11月11日(土)に、母校である両国柔整鍼灸専門学校(了徳寺学園医療専門学校)で卒業生セミナーがありましたので、行って来ました。
恒例のセミナー前の腹ごなしは、今回もJR両国駅近くにある立ち食いそば文殊です。
もっと他のお店にも行ってみたいのですが、
なんたって安い・美味い・早い
なので、ついつい文殊にしてしまいます。
だいぶ寒くなってきたので、今回はざるそば定食ではなく、温かいおそばの定食にしました。
そば定食に春菊をトッピングしました。卵は今回「生卵」です。
丼ものは相変わらずのカレーライスです。
次回は違うお店にも行ってみようかな? 検討中です。
では、ここから本題になります。
前回は、脈診と脈調整の講義までいきました。今回は腹診の講義になります。
積聚治療では、前回までの脈調整までに身体の変化があったものが「聚」になり、腹診をして残っているのが「積」になります。
胸腹部の領域
脈を調整した後の腹診は、積を確認して腹症を立てるために行う。それに従って背部兪穴の治療方針が決まる。
腹部の積は最も重要な指標である。
上の図は『難経』十六難にでてくる五臓の腹診の図です。五臓の病変を診る腹診法として、図のように診る部位を割り当てていました。
- 肝病は、臍の左に動気あり、これを按せば牢(かた)く、もしくは痛む。
- 心病は、臍の上に動気あり、これを按せば牢く、もしくは痛む。
- 脾病は、臍に当りて動気あり、これを按せば牢く、もしくは痛む。
- 肺病は、臍の右に動気あり、これを按せば牢く、もしくは痛む。
- 腎病は、臍の下に動気あり、これを按せば牢く、もしくは痛む。
と記載されている。
ただ上の図を見てもらうとわかるように、境界がおおざっぱすぎるので、臨床としても使いづらい所もあったと思います。
そこで、積聚会会長の小林 詔司先生が臨床でも教育でも使えるようにしっかりと境界線を引くことによって腹診を使いやすく尚且つ分かりやすくしてくれました。
一応見やすいように色分けしてみました。
五行には五色というのがあります。(五色の色分けをしてみました。)
五臓の名称での区分
心積とする領域
腹部
- 上下幅:心窩部より上脘線(上脘の高さで横に引いた線)まで
- 左右幅:左右の腎経と胃経の中間線の間
胸部
- 上下幅:胸骨下端より天突、鎖骨下縁まで
- 左右幅:左右の腎経と胃経の中間線の間
脾積とする領域
- 上下幅:上脘線より陰交線(陰交穴と気海穴の中間線)まで
- 左右幅:左右の腎経と胃経の中間線の間
腎積とする領域
- 上下幅:正中部は陰交線より下、左右域は関元線より下、下限は恥骨と鼠径部の上まで
- 左右幅:左右の腎経と胃経の中間線の間
肝積とする領域
腹部
上下幅:左季肋部下縁より関元線まで
左右幅:左腎経と左胃経の中間線から左胆経までの範囲
胸部
- 上下幅:右鎖骨下縁より右季肋部下縁まで
- 左右幅:胸部の心の領域の右側
肺積とする領域
腹部
- 上下幅:右季肋部下縁より関元戦まで
- 左右幅:右腎経と胃経の中間線から右胆経までの範囲
胸部
- 上下幅:左鎖骨下縁より左季肋部下縁まで
- 左右幅:胸部の心の領域の左側
積の種類
先程の『難経』十六難にありました、
「病は動気あり、これを按せば牢(かた)く、もしくは痛む。」とありますので、
積の内容は痛み・硬さ(牢)・動気の3種類になります。
痛積
ここで言う痛みとは、自覚痛・他覚痛・自覚や他覚的な不快感を指している。
まず第一に自覚痛の確認をする。
患者の言葉に従って腹部の触診をし、その範囲と程度を確認する。
同時に顔の表情や全身の様子を観察し、痛みの程度を計る情報とする。
自覚痛がなければ次に圧痛を診る。
触診する指の沈む深さと痛みの程度を確認する。
痛みが他の所に響く場合は、響きの方向と程度を確認し治療後に響きがなくなれば治療結果はよしとする。
腹部を圧して、患者がむかつきなどの不快感を覚えることがある。これは、患者の表情や言葉から判断するもので、痛積の軽微なものととらえる。
しかし、単なる不快感だから患者の状態を軽く感じているということでもなく、治療する側も慎重さを欠かないようにしなければいけない。
牢積
牢とは腹部の緊張や凝り感を指し、圧して硬く感じる感覚であり、他覚的である。
患者は、圧されたときに圧迫感を覚えることがある。これも、その範囲と程度を確認する。
時には糞塊に触れていると感じたり、内臓下垂の状況であったり、女性の子宮筋腫などのように、具体的な状況を触診することもある。
動積
動とは、腹部の拍動であり腹大動脈に基づくものである。
これは正常であればほとんど感じられないが、腹部の組織のゆるみがあると、圧したときに感じたり表層まで響いたりするものである。そのため、正常なら正中もしくは左方に触れる脈動が、右側に現れるなどのことがある。
積の程度分類
積聚治療では積の程度を数値化することで、治療前と治療後の積の変化や前回と今回の積の違いなどをわかりやすくしていきます。
痛積
- 軽い不快感=+1
- 強い不快感=+2
- 軽い圧痛=+3
- 強い圧痛=+4
- 鈍い自覚痛=+5
- 鋭い自覚痛=+6
牢積
- 弱い牢積=+1
- 中程度の牢積=+2
- 硬い牢積=+3
動積
- 弱い動気=+1
- 中程度の動気=+2
- 強い動気=+3
積の序列
(1)痛積を第一とし、痛積がなければ牢積、牢積がなければ動積を腹症決定の対象とする。
(2)痛積の中では、自覚痛を最優先させる。
(3)同程度の痛積がいくつかある場合
- 下方を優先させる。次に中央を優先させる。
- 響く痛積よりも、響かない痛積を優先させる。
(4)腹部での判断が不明瞭な場合
- 胸部と関連させて診る。
- 腹部のどこを圧しても同じような痛みがあるとか、同じような硬さがある場合は、病症に従う。(上実性のものがあれば心積、下肢の冷えや浮腫み等があれば腎積、判断がつかないものは脾積)
患者の訴えは色々あるのに、腹部の痛み、硬さ、拍動がなく、何ら実症状を示さない場合である。これは訴えが非常に軽微で腹部症状として現れる程ではないこともあるが、往々にして重症であることを示し、広く情報を集める必要がある。
この積聚がまったくみられないケースの治療方針は、これもどこにでも積がある場合に準じて、腹部以外の指標から判断して腹症を決め対処する。
例えば上気が激しいとすれば心虚証とし、下半身の冷えが強いとか膝が痛むなどがあれば腎虚証とする。
腹症表現
腹症は5種類になります。
1.心積心虚証
2.脾積脾虚証
3.腎積腎虚証
4.肝積肝虚証
5.肺積肺虚証
例えば、腎積の消失はただ腎が治ったとするのではなく、精気の虚が補正されたことを意味すると把握するのである。
積と聚の意味とその違い
積と聚はともに気の集積したものであるが、積のほうが聚よりも気の密度が高い。
そのため積よりも聚のほうが変化しやすい。
いずれにしても腹部は全身の気の状態が投影されたものである。
聚:陽の気の集まったもの(移動性)
- 集まっていても刺激を与えることで散り散りに動いてしまう
積:陰の気の集まったもの(固定的)
- 動きずらい気の状態。積み重なっているもの
腹診の仕方
- 触診は、左手(押手)を用いる。手の平が皮膚に触れるような角度を意識する。但し、下腹部には右手を用いる
- 左手の3指、すなわち示指・中指・薬指の指腹もしくは指端で腹部を圧迫する。爪をたてないようにし、腹部表面から徐々に圧を加え、3指を交互にゆっくりと動かしながら窺う。
- 3指は開き加減にし、それぞれの指で腹部の状況を感じ取るようにする。その時患者に不快感を与えない。
- 腹部を圧する力は、患者の腹圧と均衡がとれる深さが適当である。
- 爪は十分切っておく。
- 同じ部位に何回も圧力をかけて患者に余計な苦痛を与えない。
- 腹部の圧迫を嫌う患者は、腹部に手をあてた状態で息を吐かせると腹部の緊張が緩む。
まとめ
今回は腹診の講義になりました。
積聚治療では、腹診の積が一番の指標になります。
なので、今回も説明文が多い記事になってしまいました。
今回の記事も資料を参照して書いています。
参照資料積聚治療 小林 詔司著 医道の日本社改訂 積聚治療テキスト 積聚会東洋医学概論 医道の日本社
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