千葉県浦安市で鍼灸院をしているTENGEN院長です。
9月10日(日)に積聚会主催の講習会応用1コースがありましたので、行って来ました。
8月は講習会が夏休みになりますので、約一か月ぶりの講習会になります。
実をいうと前回の講習会で前半の半分が終わり、今回から後半に入ります。(全10回なので)
いつものように場所はおなじみ、錦糸町にある積聚会事務局です。
(余程の事がない限り、会場の変更はないでしょう。)
前回までの講義でやってきた問診からの情報を活かして、今回からはその情報から身体の状態を把握して、病症を決めていく講義に入ります。
病症とは
【病症】 病気の性質・状態。病質や病状。大辞林 第三版参照
積聚治療では病症を5種類に分類して病態を判断します。
- 陰虚病症
- 陽実病症
- 陰実病症
- 陰実陽実病症
- 陽虚病症
積聚治療では根底に「精気の虚(生命力の低下)」があります。精気の虚が進むにつれて身体に様々な偏りがでてきます。これらの病症は精気の虚の状態と程度を示しているだけになります。ただし、おおむね陰虚病症は軽症であり、陽虚病症は重症となります。
陰虚病症
病症の基本となります。陽実・陰実・陰実陽実・陽虚病症は「陰虚が高じるとでてくる病症」なので様々な病症の背後には陰虚病症があります。
(1)体の下部に表れる症状
(2)陰虚脈
陽実病症
陰虚が強くなるとそれに伴って、陽面に熱が表出する状態。
この現象は、陰気の力が弱ると身体の熱を制御することができなくなる傾向にあり、それが陽面に熱の症状として現れることを意味する。
陽面とは、体表面や粘膜、全身的には横隔膜より上部、脈の上面、腹部では臍より上部等の身体の上部を指している。
それらの部位に熱が表出したり籠るという現象を指して、陽実病症という。
(1)脳病症。これは半身の肩甲骨・肩関節・臀部・足底に痛みが良く表れる。
(2)皮膚や粘膜が熱をもっている状態。 ex)消化器の病気など
(3)陽実脈
陰実病症
陰実とは、身体の内部の気の実すなわち熱である。
具体的には、体の内部に凝りとなって現れるものが多く、子宮筋腫や内臓腫瘍などが代表的なものである。あるいは、糖尿病のように全身症状であることもある。いずれも陰虚病症が強くなったものであるから、陰虚病症を伴うこともよくみられる。
(1)内臓器官に表れる病症で、肝臓異状を含む
(2)陰実脈
陰実陽実病症
陰虚が強くなって、時には陰実病症と陽実病症が重なって現れることがある。これは陰虚が一層強くなったもので、それだけ精気の熱のコントロールが利かなくなっていると判断する。
例えば、肝炎になって湿疹が出るなどのことがある。これを陰実陽実病症と表現する。これも陰虚病症をよく伴うものである。
(1)陰実病症と陽実病症が混在して表れる病症
(2)陰実・陽実脈
陽虚病症
陰虚病症がさらに一層強くなると、身体の精気がかなり抜けてくる。この状態を陽虚病症とする。
この精気が抜けるような感覚は、身体から熱を発しなくなる状態ともいえる。
皮膚は全体的に乾いて艶がなくなり、気力がなくなり、呼吸は浅く疲労感が強く、些細な日常的な仕事もできなくなる。
初期には頭部や顔面部が熱くなる、目が充血する、耳鳴りがする、鼻が詰まるなどの上部の陽実病症を伴うこともある。これに食欲がなくなるようなことが加われば、かなり重症とみるものである。おおむね全身症状で血液やリンパの障害などは、ほどんどこれに該当する。
(1)主たる症状は活動の低下であるが、重度の無力症や不妊症を含む。
(2)陽虚脈
病症判断の原則
①あらゆる病症は精気の虚から生じる。
②一般的に精気の虚が強くなると病症は重くなり、指標の数も増える。しかし、重い病症・指標の数の多さが常に強い精気の虚を示すとは限らない。
病症の治療方式
積聚治療では、腹診で証を立てて背部兪穴に治療をしていきます。
この時、病症によって治療方式を変えていきます。
例)肝積肝虚証の場合
水⇒木⇒土⇒金
この順番が第1方式になります。
この方式は難経69難による治療手順になります。
実線の→が相生関係
点線の→が相剋関係
五行 | 木 | 火 | 土 | 金 | 水 |
五臓 | 肝 | 心 | 脾 | 肺 | 腎 |
五腑 | 胆 | 小腸 | 胃 | 大腸 | 膀胱 |
肝積肝虚証は木の領域に精気の虚が起こり、実症状がでているとします。
難経69難では、「虚していればその母から補う」とあります。
①木の母は水になるので、まず水の領域を補う治療していきます。
②木自体が弱っているので、木の領域を補う治療していきます。
③木が弱ってくると、相剋関係で土を抑えられなくなっていると考えられるので、土の領域を抑える治療していきます。
④金は木を抑えるので、抑えるのを弱める為に金の領域に抑える治療していきます。
この順番が第1方式になりますので、第1方式をA⇒B⇒C⇒Dとします。
- 第1方式:A⇒B⇒C⇒D
- 第2方式:C⇒D⇒A⇒B
- 第3方式:B⇒A⇒D⇒C
- 第4方式:D⇒C⇒B⇒A
臨床上ある程度意味があると考えられる組み合わせは上記の4組になります。
先程の5つの病症にこの4組の治療方式で治療していきます。
病症と治療方式の関係
治療方式は病症に応じて選択していきます。
- 陰虚病症:第1方式
- 陰実病症:第2方式
- 陰実陽実病症:第2・第3・第4方式
- 陽実病症:第3・第4方式
- 陽虚病症:第4方式
5つの病症を4つの治療方式で行うので、方式が重なる部分もでてきます。
しかし、人間の体は色々な要素が混在して症状として表れるので、方式が重なるのは当然だと思います。
陰実陽実病症は、陰・陽の実症状が混在しているので陰陽の実症状が強い方で治療方式を変えてみることもできます。
陰実陽実・陽実病症と第3方式の関係で新しい基準ができていました。
内容は、ここでは秘密にしておきます。
積聚治療が気になる鍼灸師の方は、講習会を是非受けてみて下さい!
僕は、この基準の説明を聞いて「なるほど!」と思いました。
第4方式は熱のコントロールができない病症になります。
- 陽実:熱を抑えられない
- 陽虚:熱をださせる力がない
まとめ
前回までの問診を駆使して病症を探り、治療方式の選択にはいってきました。
僕がまだ習いたての頃は、治療方式も第1方式(順治)・第4方式(逆治)までしか確立されていませんでした。
臨床の中でどんどん進化を遂げているというのは、本当に凄いことだと思います!
東洋医学は古臭いのではなく、まだまだ伸びしろがある治療だと実感しました。
今回も大変充実した講習会になりました。ありがとうございました!
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